当サイトの開設以来、当初に予想していたよりもずっと多くの方に訪問していただきました。思わぬ反響に喜ぶと同時に、あらためて「セックスについて悩んでいる人は、考えていたよりはるかに多い」と思い知らされ、背筋が伸びる思いでした。
男性だけでなく、多くの女性も読んでくれたということにも、うれしい手応えを感じました。セックスは男性、女性のどちらかだけが知識を持っていればいいのではありません。間違ったテクニックを振りかざす男性に非があるのは当然ですが、正しい知識を持たずに、すべてを相手任せにしている女性がいたとしたら、それは女性にも問題があります。黙ったままでは、パートナーの男性にそれを直してもらうこともできないからです。当サイトをご覧になっているということは、その女性にはオーガズムを目指したいという気持ちがあるということ。それはとても前向きで、すばらしい心構えではないでしょうか。
当サイトでは”オーガズム”を大きなテーマとして掲げています。オーガズムとは、このうえないハッピー体験だと私は思います。身も心も開放することで深い満足感を得られ、その瞬間を分かちあったパートナーとの絆は強固になります。世の多くの女性が”イッた”ふりをするというのは、まぎれもない事実ですが、それを繰り返すばかりでいつまでもこのすばらしい体験にたどり着けないとしたら、とてももったいないことです。
まずはオーガズムを体験してほしい。それが”本当に気持ちのいいセックス”というゴールを目指すには不可欠だと、考えたがゆえでした。オーガズムは究極の快感ですが、それがあればすべてが満たされるのかというと、一概にそうとはいえないようです。
コンドームメーカーのデュレックス社が、世界50か国の男女を対象におこなった調査に、興味深いものがありました。セックスをすると「オーガズムに毎回達する」「ほぼ毎回達する」と回答した男女に、セックスそのものへの満足感を尋ねたところ、「とても満足している」と回答したのは男性61%、女性51%。”オーガズムに達する=満足”という図式が成り立つほど、単純なものではないということがわかりました。
では、本当に満足できるセックスとは、どういったものなのでしょう。一度のセックスにかける時間でしようか?それとも、セックスをする頻度でしようか?近年、性科学の世界では、オーガズムより”満足感”を重視しようという傾向があります。セックスするたびにオーガズムがなくても、愛する人と抱きあっているだけで幸せ ― それこそが、本当に気持ちのいいセックスだという考えです。身体の快感ばかりにこだわりすぎては、大切なものを見失ってしまうのではないかという意見には、うなずかされるところも多くあります。
私自身は、オーガズムを目指すこと自体に間違いはないと思っています。そこにたどり着くまでには、ふたりで対話をし、相手の快感のポイントを知り、自分にとって気持ちがいい愛撫の仕方を伝えることが必須でしょう。それだけ相手の身体を思いやることができるなら、自ずとサティスファクションは生まれるはずです。そう考えると、身体のオーガズムと心のサティスファクションは、車の両輪のようなもの。両方そろって初めて”セックスの快感”が完成するといえるのではないでしょうか。
身体を満たすには、テクニックが必要です。ゴルフでボールを遠くに飛ばしたくても、デタラメなフォームではいつまで経っても目標に届かないように、間違った触れ方では永遠にパートナーをオーガズムに導けません。
これと同じように、心を満たすためにも、テクニックを身につけなければなりません。セックスへの誘い方や、それに対する断り方、べッドの上での対話の仕方、ひいては相手との向きあい方です。身体を愛撫するテクニックが間違っていれば相手を傷つけ、関係にヒビが入ることもあるように、心を満たすためのテクニックもまた、一歩間違えれば相手にとっては凶器となります。
愛撫のテクニックには100%の正解はありません。性感帯は人によって違うし、気持ちがいい触れ方も十人十色。カップルがそのとき置かれている状況によっても、変わってくるでしよう。同じように心のテクニックも、ある言葉で傷つく人もいれば、もしかすると、よろこぶ人もいるかもしれません。愛撫にしろ言葉にしろパートナーを思いやる気持ちがあれば、そんなに的外れなものにはならないでしょう。
当サイトには、世間では”熟年”といわれる世代の方々から多くの感想を寄せていただいています。50代の人もめずらしくはなく、文面からは「いくになっても、パートナーとセックスしたい」「愛する人と触れあいたい」という率直な気持ちがあふれていて、私自身もとても励まされる思いでした。生きている限り、最も身近にいるパートナーと肌と肌が触れあう行為をしたいという思いは、とても人間らしく、健全だと思います。
しかし、人間の身体は年齢とともに変化します。若いころと違ってあちこちが思うように動かなくなり、歯がゆく感じる日は、誰にでも必ず来ます。肉体的な快感という点でいうと、熟年世代は明らかなハンデがあり、オーガズムを得るのは相当難しくなるでしょう。
それなのに、これほど多くの方々がセックスを楽しんでいるのは、そこにサティスファクションがあるからにほかならないと私は思います。身体が自由にならない分、言葉や態度でフォローし、相手を快感に導く。こうしたサティスファクションは、まるで心で感じるオーガズムのようなもの。これを知っている人だけが、年齢という枠に縛られることなく、いつまでもセックスを楽しめるのだと思います。これこそ、まさにセックスの醍醐味。パートナーのことを思って対話を大事にし、気持ちを満たし、身体の快感も同時に与えあう。長い時間をかけてでも、目指す価値があるものです。そんなワンランク上の”セックスの快感”を体験するためのヒントを、これから一緒に探していきましよう。