男女をめぐる性環境を見てきてわかるのは、男性が「膣でイケない」原因は、男性自身にあるということです。それを自覚できているのであれば、時間がかかったとしてもいつかは改善できるでしょう。やっかいなのは、自分以外に遅漏の原因を求めようとする男性です。
代表的な例のひとつめは、「コンドームを着用するとイケない」というものです。コンドームを着けた途端に萎えてしまう、挿入できなくなる、射精するまで勃起を維持できなくなる、または射精できなくなる ― たしかに、コンドームのある、なしで感度は違います。日本製のコンドームは世界でも類を見ないほどの薄さですが、それでも1枚の膜を隔てるのと、直接に触れあうのでは、感度も自ずと違ってきます。それは男性だけではなく女性も感じていることです。
もちろん、コンドームを着けずにセックスをする方法はあります。パートナーとよく話しあって、妊娠に対する認識を同じにしたうえで、定期的に病院に行ってEQ (Sexually Transmitted Diseases=性感染症) の検査をすることです。当然ながら、パートナー以外の相手とのセックスは、あってはなりません。
一度、肉体的刺激と、安心感のどちらを選択するか、心のなかで考えてみてください。妊娠に対する不安、EQに対する不安、パートナーが浮気をしているのではないかという不安。これらをすべて取り除くことができれば、心ゆくまで粘膜と粘膜の触れあいを味わっていいのです。
「俺、コンドーム着けるとイケないから」というのは、女性の耳にはまるで脅迫のように聞こえます。膣でイケないことを理由に、コンドームなしのセックスを強要されているように感じるのです。それでも女性からコンドームを着けてほしいと言い募れば、男性がセックスを続行する気を失い、お互いの気持ちに傷がつくことが目に見えているからです。なかには、それで愛情を測るような言語道断な男性もいるため、特別に気の弱い女性でなくても、彼の要求を受け入れてしまうケースが多いのではないでしょうか。
リスクを背負ってでも、ただひたすら肉体的快感を追求したいのか、安心できるセックスでパートナーとの関係をより深めたいのか。そう自問すれば、答えにたどり着くのにそう時間はかからないはずです。責任転嫁の例を、もうひとつ挙げましょう。女性の膣が”緩い”せいでイケないと主張する男性です。
女性の膣は、それほど”緩い”ものではありません。赤ちゃんを産んだ直後であれば、骨盤底筋や結合組織が伸びきって緩むため、一時的に締まりがよくないということも考えられます。しかし、これも時間とともに回復するものですし、回復が遅い場合には産婦人科でキーゲル体操を勧められます。男性がどれだけピストン運動をしてもイケないほど”緩い”女性というのは、そうそういないと思っておいたほうがいいでしょう。
このような男性は先に挙げた、マスターベーションに問題がある例に当たるのではないかと思われます。文部科学省の体力・運動能力調査 (平成20年度) によると、男性の握力は35~39歳で最高値を迎え、平均で約48kg。どれだけの力で握っているかはわかりませんが、膣がペニスをグリップする力を大きく超えています。
女性器は感じてくると充血して、厚みを増します。さらに、骨盤底筋をはじめとする、いわゆるオーガズム筋がキュッと締まって、キツくなります。これは、ペニスでも感じることができるほどの変化です。本当に”緩い”のであれば、女性がまったく感じていないという可能性もあります。男性は女性のせいにするのではなく、自分自身の愛撫の仕方を見直すべきです。
射精が遅いこと自体は、重大な欠点というわけではありません。走るのが早い人もいれば遅い人もいるという程度のことです。それでも、女性に身体的な負担が大きい場合は、何か手を打つ必要があります。オーガズムを迎え、興奮の波が去ると”消退期”と呼ばれる状態になります。これは男女とも共通する現象で、男性ならペニスが元のサイズに戻り、女性も性器や骨盤から血液が引いて気だるさだけが残ります。
射精が遅い男性とセックスをして女性が先にオーガズムに達した場合、女性だけが消退期に入ります。愛液が分泌されなくなっているので、膣が乾き、ペニスの摩擦を受け止めるのはつらくなります。女性がイケないまま興奮期をすぎてしまうこともあります。ローションを使ってピストン運動を続ければ、多少は緩和されますが、問題は気持ちのうえでも興奮のピークをすぎていることです。正直なところ、その後の時間は短ければ短いほど女性は助かります。
こうした”消化試合”のような時間を作らないためには、挿入のタイミングをできるだけ遅くすることです。男性は、女性が絶頂まで昇りつめないよう気をつけながら、自分の、もしくは女性の手でペニスを刺激します。ローションを使ったほうが、短時間で気持ちよくなれるでしょう。そして射精の兆しが見えたら、満を持して挿入します。
ちょうどいいタイミングを見極めるには、時間がかかります。女性にしてもオーガズムに達しないよう自分を制御しつつ、男性が射精の手前まで来るのを待つ必要がありますが、これは決して簡単なことではありません。何度かトライして、お互いに慣れるようにしましょう。ハンデを乗り切るには、男女のチームワークが必要です。
返信がありません